アパートの地震保険に大家は加入すべき?メリット・デメリットや保険料を解説

アパートの地震保険に大家(オーナー)は加入が必要か

アパートなどの賃貸経営による不動産投資では、地震保険に加入すべきか悩んでいるという方もいるのではないでしょうか。

震度7以上の大規模地震も多い近年の日本では、火災保険と共に地震保険への加入も重要なリスク対策になります。

このコラムでは、アパートの大家様(オーナー様)が地震保険に加入するメリット・デメリットを分かりやすく解説します。

地震保険料の相場も紹介しますので、これからアパート経営で不動産投資を始めたい方や、賃貸アパートを相続する予定の方は参考にしてください。

 


コラムのポイント

  • リスクの少ない安定したアパート経営を目指すなら、地震保険への加入がおすすめです。
  • 地震保険は被災した建物の修繕に備えられるのはもちろん、当面の住宅ローンの返済に充てることもできます。
  • 地震保険を検討する際は、保険金だけで建物を修繕しきれない可能性や、保険料が固定費となり支出が増える点に注意が必要です。

【結論】アパートの地震保険に大家は加入すべき?

地震保険に加入したアパート経営イメージ

アパートの地震保険は義務ではなく任意ですが、リスクの少ない安定経営を目指すなら加入すべきと言えるでしょう。

アパートローンを組む際に加入が必須となる火災保険だけでは、以下のような損害まではカバーできません。

  • 地震による建物の倒壊や損傷
  • 地震が原因で起きた火災による建物被害
  • 津波による建物被害

万一、地震保険に未加入のアパートが地震によって大きな被害を受けた場合、家賃収入が途絶えてローン返済が滞るリスクがあります。

さらに、地震で建物が倒壊するなど被害の度合いによっては、再建の目処が立たず売却もできないために負債だけが残ってしまう可能性もあります。

地震保険に加入しておけば、保険金で建物を修繕して家賃収入が途絶える期間を短くしたり、ローン返済に充てたりできます。

保険料はかかりますが、経営計画にあらかじめ組み込んでおけば負担を抑えてリスク対策ができます。

 

 

アパートの地震保険とは

アパートの大家(オーナー)が地震保険の基礎知識を学ぶ

はじめに、地震保険の基礎知識を簡単に解説します。

地震保険は火災保険とセットで加入する必要があり、単体では加入できません。また、火災保険に加入していれば、契約期間の途中でも付帯可能です。

地震保険は民間と国が共同で運営しており、保証内容や保険料はどの保険会社でも一律になります。

 

地震保険の補償範囲

地震保険の補償範囲は主に以下のような被害になります。

  • 地震による倒壊、火災、埋没
  • 噴火による損壊
  • 津波被害

上記のように、火災保険ではカバーできない地震や地震に伴う火災、津波被害に加え、噴火による建物の損壊についても保険金が支払われます。

(参考)日本損害保険協会|地震保険

 

地震保険の補償金額

地震保険の保険金額は、加入している火災保険の保険金額の30%~50%の範囲内で任意に決められます。

地震保険は建物のほかに家財にもかけることができ、それぞれの火災保険に応じて別々に加入します。補償限度金額は建物が5,000万円家財が1,000万円です。

また、損害を受けたときの補償金額は、以下のように建物・家財の損害状況に応じて支払われる保険金の割合が変わります。

〈地震保険の損害状況に応じた補償割合〉

全損 大半損 小半損 一部損
支払われる保険金 契約金額の100%
(時価が限度)
契約金額の60%
(時価の60%が限度)
契約金額の30%
(時価の30%が限度)
契約金額の5%
(時価の5%が限度)
損害の状況 建物
(①②のどちらかを満たす場合)
①基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の50%以上

②焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の70%以上

①基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の40~50%未満

②焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の50~70%未満

①基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の20~40%未満

②焼失・流失した部分の床面積が建物の延床面積の20~50%未満

①基礎・柱・壁・屋根などの損害額が建物の時価の3~20%未満

②全損・大半損・小半損・一部損に至らない建物が床上浸水または地盤面から45cmを超える浸水

家財 家財の損害額が家財の時価の80%以上 家財の損害額が家財の時価の60~80%未満 家財の損害額が家財の時価の30~60%未満 家財の損害額が家財の時価の10~30%未満

(参考)財務省|地震保険制度の概要

 

 

アパートの地震保険に加入するメリット

地震保険に加入してアパート経営のリスクに備える

アパートの大家が地震保険に加入するメリットをまとめます。

 

地震の被害を受けたときに復旧しやすくなる

地震や津波などでアパートが被害を受けた際、火災保険では補償されないため、復旧が遅くなってしまいます。また、地震が原因の火災についても火災保険の補償範囲外となる点に注意が必要です。

地震保険は建物の倒壊だけでなく損壊も対象になり、建物については5,000万円まで保険金が下りるため、素早く復旧を進めて家賃収入がない期間を短くできます

 

保険料をローンの返済に充てることもできる

地震保険は被災した際の生活再建を支える目的で運営されているため、保険料の使い道に制限はなく、建物の修繕以外の用途にも使えるのもメリットです。

〈地震保険金の用途の一例〉

  • 住宅ローンの返済
  • 引っ越し・仮住まい費用
  • 地震後の当面の生活費、生活必需品の買い替えなど

経営しているアパートが地震被害を受けた場合、家賃収入が得られない期間のローン返済に充てることも可能です。

(参考)日本損害保険協会|地震保険とは?

 

保険料を経費計上できる

アパートなど経営している不動産にかけている火災保険料や地震保険料などは、確定申告の際に経費として不動産所得から差し引けるため、所得税を節税できます。

ただし、保険期間が1年契約の場合は、その年度の経費として全額計上できますが、数か年契約で契約している場合は、契約年数で割って年ごとに計上します。

 

 

アパートの地震保険に加入するデメリット

アパートの大家が地震保険に加入するデメリット

地震保険は、地震災害によるリスクに備えられるメリットがある一方で、デメリットもあります。保険加入を検討する際にデメリットを知っておくことで後悔しない選択ができますので参考にしてください。

 

保険金で修繕できない可能性がある

地震保険金額は最大で火災保険金額の50%までとなり、建物の補償金額の上限は5,000万円のため、アパートの規模や損壊状況によっては保険金だけで修繕できない可能性もあります。

地震保険を含むアパートの損害保険に加入する際は、以下のようにさまざまなケースを考慮して総合的に判断することが大切です。

  • 地震保険の補償額も考慮して火災保険を決める
  • 建物だけでなく家財保険にも加入する など

 

保険料が負担となりキャッシュフローが悪化する

地震保険加入中はずっと保険料がかかります。保険料は掛け捨てで返ってこないため、保険料の負担が増えてキャッシュフローが悪化してしまう可能性もあります。

とはいえ、地震保険料は年間数万円程度なので、そこまで大きな負担にはなりません。具体的な地震保険料の計算方法を次の章でチェックしてみましょう。

 

 

アパートの地震保険料はいくら?

投資用アパートの地震保険料を計算するイメージ

地震保険の基本料金

地震保険料は、建物の構造と地域(都道府県)によって決まります。

首都圏の都道府県の地震保険料は以下のようになっています。

〈地震保険の基本料率(保険金額1,000万円あたり保険期間1年につき)〉

都道府県 イ構造(主として鉄骨・コンクリート造建物等) ロ構造(主として木造建物等※)
千葉県 27,500円 41,100円
東京都 27,500円 41,100円
埼玉県 26,500円 41,100円
神奈川県 27,500円 41,100円

※木造住宅で「耐火建築物」「準耐火建築物」および「省令準耐火建物」等に該当する場合は「イ構造」になります。

(参考)財務省|地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)

例えば、千葉県の鉄骨造アパートで保険金額を2,000万円に設定した場合の年間保険料は55,000円になります。

 

地震保険の割引制度

地震保険は、契約期間や建物の免震・耐震性能、建築年に応じた割引制度があります。

〈長期契約による保険料率の違い〉

地震保険は1年から最長5年契約まで選択でき、契約期間が長くなるほど1年あたりの保険料が安くなります

保険期間 係数
1年
2年 1.90
3年 2.85
4年 3.75
5年 4.70

 

例えば、保険期間1年契約で保険料が年間55,000円の場合、5年間の保険料は55,000円×5=27,5000円になります。

一方、保険期間5年契約では55,000円×4.70=258,500円となり、5年間で16,500円お得になります。

 

〈免震・耐震性能、建築年に応じた割引制度〉

割引制度 割引の概要 割引率
免震建築物割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく免震建築物である場合 50%
耐震等級割引 住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している場合など 耐震等級3 50%
耐震等級2 30%
耐震等級1 10%
耐震診断割引 地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、
改正建築基準法における耐震基準を満たす場合
10%
建築年割引 昭和56年6月1日以降に新築された建物である場合 10%

 

例えば、アパートを耐震補強して等級3を取得すると、地震保険料を半額に抑えられます

保険料は加入している限りずっとかかる費用のため、割引適用のためにかかる初期コストとのバランスも考えながら検討しましょう。

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まとめ

アパートなどの不動産経営では、地震災害へのリスク対策も重要になります。

火災保険だけでは地震による火災や倒壊、津波被害をカバーできないため、リスクの少ない安定経営を目指すなら地震保険への加入をおすすめします。

地震保険に加入することで、被災した建物の修繕に備えられるのはもちろん、当面の住宅ローンの返済に充てて経営再建を目指すなどの動きも取りやすくなります。

一方で、保険金だけで建物を修繕しきれない可能性や、保険料が固定費となり支出が増える点に注意が必要です。

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