事業用定期借地権とは?貸主のメリット・デメリットやトラブル対策を解説
このコラムでは、事業用定期借地権によって土地を貸し出す資産活用方法のメリット・デメリットについて解説します。
事業用定期借地権で起こりうるトラブルやリスク対策も紹介しますので、土地活用を検討中の方は参考にしてください。
コラムのポイント
- 事業用定期借地権による土地活用は、地主にとっては一般定期借地権よりも短い契約期間を選べ、地代も高めに設定しやすいなどのメリットがあります。
- 一方で、建物の用途が事業用に限定される点や、契約期間が30年以上の場合は期間満了後の契約更新と建物買取請求権の設定が任意になる点などに注意が必要です。
- 借地権の契約にはさまざまな専門知識が必要になるため、土地活用のプロに相談するのがおすすめです。
Contents
そもそも定期借地権とは?簡単におさらい
定期借地権とは、「他人の土地を借りて、事前に取り決めた期間だけ自己所有の建物を建てて土地を使える権利」を指します。
通常の借地権では、建物が土地の上に存在している場合、契約は更新されることが原則となっているなど、借地人が有利な扱いとなっています。
一方、定期借地権は「借地借家法」によって契約期間終了後の更新が不要、建物買取請求権を認めない特約を結べるなど、従来の借地権よりも地主側の権利が強く規定されています。
定期借地権は期間が満了すれば土地が返還されるため、地主にとっては土地活用の見通しが立てやすく、安心して貸し出せる方法と言えます。
一方で、借地人は土地購入のイニシャルコストを抑えて事業を開始できるため、定期借地権は双方にとってメリットがある合理的な仕組みと言えます。
〈定期借地権のメリット・デメリット〉
メリット | デメリット |
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〈関連コラム〉
定期借地権のメリット・デメリットとは?種類別にわかりやすく解説
事業用定期借地権とは?メリット・デメリットを解説
事業用定期借地権とは、定期借地権のうち「建築する建物の用途を事業用のみに限定」して土地を借りる権利を指します。
定期借地権には次の3つの種類があり、種類によって契約期間や特約内容が異なります。
〈定期借地権の種類と特徴〉
一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | |
存続期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満 | 30年以上 |
建物の用途 | 自由 | 事業用に限る | 自由 |
契約更新 | なし | 10年以上30年未満:なし 30年以上50年未満:任意 |
なし |
土地の返還方法 | 借地人が更地にして返還 | 借地人が更地にして返還 | 地主が建物を買取り借地権が消滅 |
契約方法 | 書面 | 公正証書 | 公正証書 |
事業用定期借地権のメリット
存続期間(契約期間)を選べる
事業用定期借地権は存続期間(契約期間)を10年以上50年未満の間から選べる点がメリットです。
存続期間が最低50年と長期にわたる一般定期借地権よりも短いスパンで貸し出せるため、自身の土地活用計画に合わせた柔軟な設定ができます。
地代を高めに設定しやすい
事業用定期借地権は、収益性の観点から居住用と比較して地代を高めに設定しやすい点もメリットです。
ロードサイドなど事業に適した立地は土地の評価が高くなりやすく、より高い地代を設定できる可能性もあります。高い収益を上げられれば、長期にわたって安定して収入を得やすくなります。
事業用定期借地権のデメリット・注意点
土地の活用用途が限定される
事業用定期借地権は、活用用途が店舗や倉庫、事務所など事業目的に限定されるため、借地人は戸建て賃貸やアパートやマンションを建築できない点に注意が必要です。
店舗やビルの需要が少ない立地では、事業用定期借地での契約希望者がなかなか見つからない可能性もあります。
存続期間によって契約更新のルールが変わる
事業用定期借地権は、存続期間(契約期間)が10年以上30年未満の場合と、30年以上50年未満の場合で契約更新時のルールが変わる点にも注意が必要です。
- 契約期間が10年以上30年未満の場合(更地返還強制型)
契約期間が10年以上30年未満の場合は、一般の定期借地権と同様に契約の更新や地主への建物買取請求権はなく、契約の終了時には借地人が土地を更地にして返還します。- 契約期間が30年以上50年未満の場合(任意特約型)
契約期間を30年以上50年未満とした場合は、期間満了後の契約更新と建物買取請求権の設定が任意になります。
任意特約型では契約時に「期間満了後の更新と建物買取請求権を設定しない」旨の特約を付けない限り、契約満了後に借地人が地主へ建物の買い取りを請求できる点に注意が必要です。
公正証書によって契約する必要がある
事業用定期借地権設定にあたっては、契約書は公正証書で作成する必要があります。電子契約はできず、収入印紙の貼付が必要な点に注意しましょう。
事業用定期借地権で起こるトラブル例と対策
事業用定期借地権によって土地を貸し出す際に起こりうるトラブル例を、対策とともに解説します。あらかじめリスクを知っておくことで、土地活用の失敗リスクを軽減できますので参考にしてください。
トラブル例①:借地人の事業が経営破綻してしまった
定期借地権による借地人の事業が契約期間中に経営破綻してしまった場合、収益を得られないだけでなく、建物の撤去費用などの負担が発生するリスクがあります。
さらに、借地に建つ建物は、所有者である借地人の許可がなければ取り壊せないため、経営破綻後の対応協議や連絡が滞るとトラブルに発展してしまう可能性があります。
地代の滞納が一定期間続くなど、事業経営に破綻の兆候が見られたら、借地人の余力があるうちに契約解除を申し出るなど早めの対策を取りましょう。
早めに対策ができれば、事業者の負担で建物を取り壊した上で土地が返還される可能性が高くなります。
トラブル例②:借地人から地代の見直し(値下げ)を要求された
土地の需要や価値、経済状況が時間経過とともに変動していくため、借地人から契約当初の地代の値下げなどを要求される可能性があります。
トラブルを防ぐためには、契約書に地代見直しの条件を明確に盛り込むことが重要です。
トラブル例③:契約延長に関するトラブル
事業が順調に収益を上げている場合など、借地人が存続期間終了後も契約の延長を求めてトラブルになるケースがあります。
トラブルを防ぐためには、契約書に期間延長に関する条件を明確にした項目を盛り込み、双方が納得した上で契約を結ぶようにしましょう。
トラブル例④:保証金が高額で相続後に返還できなくなった
事業用定期借地の契約当初に借地人から預かった保証金(定期借地契約時の一時金)が高額過ぎると、土地を相続した子が返還できなくなるケースがあります。
定期借地権は存続期間が長いため、契約途中で相続が発生しそうな場合は相続人と相談した上で保証金の額を決めるようにしましょう。
まとめ
事業用定期借地権による土地活用は、地主にとっては一般定期借地権よりも短い契約期間を選べ、地代も高めに設定しやすいなどのメリットがあります。
一方で、建物の用途が事業用に限定される点や、契約期間が30年以上の場合は期間満了後の契約更新と建物買取請求権の設定が任意になる点などに注意が必要です。
借地権の契約には、事業者との契約内容の交渉や、活用する土地の調査、契約書の作成、公正証書の締結など、さまざまな専門知識が必要です。個人で定期借地事業をお考えの方は、土地活用のプロに相談するのがおすすめです。
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