相続土地国庫帰属制度で売れない土地を手放せる?手続きや負担金を解説
相続した田畑や山林など、売れない土地の扱いに困っている方は少なくありません。そのまま土地を持ち続けると固定資産税がかかりますし、放置すれば不法投棄・占拠などのリスクも発生します。
今回は2023年にスタートした相続土地国庫帰属制度で、売れない土地を手放すための手続きや費用について解説します。
コラムのポイント
- 申請手数料・負担金など、相続土地国庫帰属制度で費用がいくらかかるのか詳しく解説します。
- 相続土地国庫帰属制度の対象にならない土地は、空き家バンクや自治体への寄付などほかの方法もチェックしておきましょう。
Contents
相続土地国庫帰属制度はどんな制度?
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き渡すことができる仕組みのことです。
例えば1970年代に横行した原野商法で購入した山奥の土地など、相続しても活用・売却ともに難しいケースは少なくありません。
今までは相続したものの使い道のない土地は、相続放棄するしか選択肢がありませんでした。しかし相続放棄はすべての財産を手放す必要があり、土地だけ選択することはできません。結果的に相続後に登記をせず放置され、所有者不明となっている土地が増えて問題になっています。
そこで2023年4月27日から相続土地国庫帰属制度がスタートし、不要な土地を手放して国に帰属できるようになったのです。
参照元:政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」
どんな人が制度を利用できる?
相続土地国庫帰属制度では無条件で土地を手放せるわけではなく、一定の要件が定められています。
まず相続や遺贈で取得した土地であることが基本要件となります。売買や交換で土地を取得した場合は、相続土地国庫帰属制度の対象になりません。兄弟などで共有している土地も、全員が同意してまとめて申請すれば対象になります。ただし生前贈与した場合は相続とみなされず、対象にならないので注意しましょう。
どんな土地が対象?
相続土地国庫帰属制度は、どんな土地でも無条件で手放せるわけではありません。具体的には、次のような土地は申請段階で却下となります。
※申請の段階で却下される土地
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
出典:政府広報オンライン
建物の解体や土壌汚染の解消など、管理の手間とコストがかかる土地はそのままだと引き渡しできません。上記に当てはまる土地は、問題のない更地状態にしないと相続土地国庫帰属制度を利用できないということです。
また審査によって次のような状態と判断された土地も不承認となります。
※該当すると判断された場合に不承認となる土地
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
出典:政府広報オンライン
高い擁壁や崖がある土地は、申請後の審査で不承認となってしまう可能性が高いです。解消が難しい条件を含む土地は、後述するほかの方法で手放すことも検討してみてください。
相続土地国庫帰属制度のメリット
不要な土地を手放す方法はいくつかありますが、相続土地国庫帰属制度は国に引き取ってもらえる安心感が大きなメリットです。相続した土地は周辺住民との関係性もあるため、信頼できる相手に引き取ってもらうことが大切です。国有地なら用途で周辺の方に迷惑をかける心配は少ないでしょう。
また前述した条件さえクリアしていれば、農地や山林など売却が難しい土地も引き取ってもらえるのもメリットです。相続土地国庫帰属制度が始まる以前に相続した土地も対象になります。
相続土地国庫帰属制度のデメリット
相続土地国庫帰属制度は時間と費用がかかる点がデメリットで、あまり使い勝手が良い制度とは言えません。
要件を満たした土地であっても、審査から引き取ってもらえるまでに1年前後の期間がかかるのは大きなデメリットです。審査中の税金や管理費用は発生するので、すぐに手放したい方には不向きかもしれません。また建物の解体や汚染除去などの費用、後述する負担金などお金がかかるのもデメリットと言えるでしょう。
相続土地国庫帰属制度の費用はいくらかかる?
実際に相続土地国庫帰属制度を利用するには、審査手数料・負担金の2種類の費用がかかります。また状況によってほかの費用が発生する可能性もあります。
審査手数料
相続土地国庫帰属制度の申請時に、1万4千円の審査手数料が発生します。審査手数料は必ずかかる費用で、申請を取りやめたり不承認になったりしても返還されません。
負担金
審査で承認された後、実際に国に土地を引き取ってもらうために、10年分の管理費用となる負担金をおさめる必要もあります。
負担金は原則的に20万円ですが、土地の条件によっては面積に応じ計算します。
例えば市街化調整区域・用途地域指定されている宅地100㎡を手放す場合、2,720円×100㎡+27,600円=548,000円が負担金となります。
農地・森林なども負担金額が変わることがあるため、手放したい土地の金額を確認してみましょう。
相続土地国庫帰属制度が使えないときの対策
前述したように、相続土地国庫帰属制度ですべての土地を手放せるわけではありません。対象要件を満たせない土地は、次のような対策も検討してみてください。
隣地所有者に相談してみる
一般的な売却が難しい土地でも、隣接する土地の所有者に相談して引き取ってもらえる可能性があります。隣地と合筆することで資産価値が増えることもありますし、活用の幅が広がるかもしれません。近所の土地が知らない人に渡るのを嫌い、引き取ってもらえるケースなども考えられます。
近隣との関係性が良好な場合、相談してみる価値は大きいでしょう。
空き家バンクに登録する
売却・活用が難しい土地は、自治体が運用している空き家バンクに登録してみるのも一つの選択肢。
空き家バンクは一般市場に出回らない山林や別荘地などを求める方も多いため、売却できる可能性もあります。空き家バンク登録は多少手数料がかかるだけで利用料は不要なため、リスクはありません。
掲示板などで無償譲渡する
最近はインターネット掲示板や土地・空き家マッチングサービスなどが増えていて、不要な土地を無償譲渡できる可能性もあります。
個人への無償譲渡の場合は贈与とみなされるため、ご自身に対する税金は発生しません。掲載費用がかからない掲示板やサービスも多いので、とりあえず登録しておくのも手です。
自治体に売却・寄付する
相続土地国庫帰属制度が使えない土地でも、自治体が独自に買取り・引き取りをしてくれるケースもあります。売却が難しくても、自治体が活用できる場合があるのです。相続した土地を管轄する市町村に一度相談してみましょう。
相続放棄する
相続予定の土地以外に大きな財産がない場合は、相続放棄するのも一つの考え方です。ただし土地だけでなく空き家も相続予定の場合、相続放棄しても管理義務は残るので注意しましょう。
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活用する
手放すことが難しい土地は、いろいろな活用方法も検討してみましょう。郊外など利便性の悪い土地でも、資材置き場や太陽光発電など活用できる方法は複数あります。
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農地中間管理機構で貸し出す
売却や地目変更が難しい農地を相続した場合、農地中間管理機構を利用するのも一つの対策です。農地中間管理機構は農地バンクとも呼ばれ、農地の借り手と貸し手をマッチングする組織です。自分で活用できない農地を耕作してもらい、賃料収入を得られる可能性があります。さらに一定条件を満たすと固定資産税を軽減できるケースもあり、節税効果も期待できます。
参照元:農地中間管理機構(農地バンク)とはどのような組織ですか。
地域に精通している不動産会社に相談する
確実に土地を売却・活用する方法を探すなら、なるべく地域情報に精通している不動産会社に相談しましょう。地元に詳しい専門家なら、手放したい土地の状況に応じて適切なアドバイスが期待できます。今まで相談した不動産会社で良い案が見つからないときは、ほかの会社にも相談してみましょう。
千葉県八千代市の土地活用・売却はオカムラホームへ
私たちオカムラホームは、千葉県八千代市を中心とする総合住宅・不動産会社です。地元密着ならではのノウハウで、お客様の不動産に合った活用・売却などの手段をアドバイスいたします。
相続した土地の扱いにお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。