ZEH-M(ゼッチ・マンション)経営のメリット|基準・補助金についてわかりやすく解説

ZEH-M(ゼッチ・マンション)経営のメリット|基準・補助金についてわかりやすく解説

最近は断熱性や省エネ性能を高めたエコ住宅が主流になりつつありますが、賃貸住宅も例外ではありません。

エコ賃貸住宅は入居者にとって光熱費節約・快適性などのメリットがあり、地球環境保護にもつながるため、国を挙げて推進している状況です。

今回はエコ賃貸住宅の一つであるZEH-M(ゼッチ・マンション)にスポットを当てて、経営面でのメリットや補助金について詳しく解説します。


コラムのポイント

  • ZEH-Mは入居率アップ・売電収入・補助金活用など、賃貸経営におけるさまざまなメリットがあります。
  • 省エネ賃貸住宅はまだ普及率・認知度が低いですが、これからのスタンダードになる可能性が高いです。

ZEH-M(ゼッチ・マンション)とは?

ZEH-Mのイメージ

ZEHは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称で、ZEH-M(ゼッチ・マンション)は集合住宅版となります。

ZEHは住宅の年間エネルギー消費をプラスマイナスゼロにするのが目標で、そのために高断熱化・高効率設備・太陽光発電などの施策が含まれます。具体的にはZEH-Mでは次のような施策が考えられます。

  • 外壁や屋根の断熱性能をアップ
  • ペアガラスや樹脂製の断熱サッシを使う
  • エコジョーズやエコキュートなど高効率給湯器を使う
  • 冷暖房効率の良いエアコンを導入する
  • HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の導入
  • 太陽光発電システムで電気を創り出す

上記のようなZEH-Mの施策は、省エネ性や快適性のアップなど基本的に入居者にとってのメリットです。しかし入居者に選ばれやすくなり入居率アップが期待できるなど、オーナー様側のメリットも少なくありません。最近は一般住宅でZEHの普及が進むとともに住まいの省エネ性能を重視するユーザーが増え、ZEH-Mも注目が高まっているのです。

政府は「集合住宅におけるZEHロードマップ」で、2030年までにZEH-Mの自立普及を目標として掲げています。ZEH-Mがこれからの集合住宅のスタンダートになる可能性があるため、賃貸経営をするうえで必ず把握・検討すべき内容と言えるでしょう。

参照元:経済産業省 環境省 ZEHの普及促進に向けた政策動向と令和2年度の関連予算案

ZEH-M経営のメリット

ZEH-M経営のメリット

ZEH-Mを建築・購入して賃貸経営することで、オーナー様には次のようなメリットが考えられます。

付加価値で入居率アップが期待できる

2023年現在ZEH-Mはまだ普及率が低いため、競合物件との差別化によって入居率アップが期待できます。省エネ性・快適性の高いZEH-Mは入居者にとってさまざまなメリットがあるため、仲介会社の営業マンにとって紹介しやすい物件と言えます。結果的に検討してもらえる機会が増え、入居率アップにつながるというワケです。

逆に言えば、今後ZEH-Mの普及が進むと、一般の賃貸物件は入居率が低下する可能性も考えられます。賃貸経営は長期スパンになりますから、今購入した物件の経営中にZEH-Mがスタンダートになる可能性は十分あります。

家賃を高く設定しやすい

光熱費を安く抑えられるZEH-Mの賃貸物件は、一般的な相場より家賃を高く設定しやすいのも大きなメリットです。家族構成によっては電気代が数千円変わる可能性もあるため、少し家賃が高くても入居者にとって十分なメリットになります。

今後ZEH-Mをはじめとするエコ賃貸住宅の認知度が高くなれば、さらに家賃収入面のメリットも大きくなるでしょう。

快適性が高く退去防止になる

断熱性が高いZEH-Mは暑さ寒さに強いため快適性が高く、入居者に長く住んでもらいやすいのも強みと言えるでしょう。特に一般的な賃貸アパートからZEH-Mに住み替えた場合、快適性の違いを大きく感じる可能性が高いです。

売電収入を受け取ることができる

ZEH-Mの太陽光発電による余剰電力の売電収入は、オーナー様が受け取るか、入居者に還元するか選ぶことが可能です。オーナー様が余剰電力を受け取る方式でも、入居者が使用した分の電力はまかなえるので十分付加価値がアップします。

毎月の余剰電力売電収入はローン返済に充てたり、修繕費や次の物件購入資金として積み立てたり、経営の選択肢が広がります。空室期間中も発電量は変わらないため、収入がゼロにならないのも大きなメリット。

補助金を活用できる

国を挙げて推進しているZEH-Mは、補助金を活用して建築費用負担を軽減できるのもうれしいポイントです。

詳しい内容は後半で解説しますが、ZEH-M補助金は規模や性能に応じて6億円~とかなり金額が大きいです。高性能な建材や太陽光発電システムが必要になるため、建築費用は高くなりますが、補助金を活用すればお得に建てられる可能性があります。

環境負荷が低く社会貢献になる

消費エネルギーの少ないZEH-Mを建てて経営することは、環境負荷を抑えて社会貢献にもつながります。住宅のエネルギー消費量とCO₂排出量は比率が大きいため、ZEH-Mで削減する効果は大きいです。

金銭的なメリットではありませんが、地球環境を保護することは私たち自身や次の世代にとって大きなプラスになるでしょう。

ZEH-Mの評価基準

ZEH-Mの太陽光発電システム

ZEH-Mはいくつかの評価基準があり、求められる性能が異なります。

外皮 省エネ率(再エネ除き20%減が必須)
ZEH-M 強化外皮基準をクリアすること 再エネ含め100%減
Nearly ZEH-M 再エネ含め75%減
ZEH-M Ready 再エネ含め50%減
ZEH-M Oriented 再エネの規定なし

上記のように4種類の評価基準があり、再生エネルギーを含めた省エネ率が異なります。ZEH-M ・Nearly ZEH-M は、1~3階建ての集合住宅が目指すべき水準、ZEH-M Readyは4~5階建て、ZEH-M Orientedは6階建て以上の建物と明記されています。高層階向けの基準になるほど再生エネルギーの基準が緩和されているのは、戸数に対する太陽光発電システムの設置面積が減ってしまうためです。評価基準は住棟単位・住戸単位それぞれで独立しています。

ZEH-Mの補助金制度

ZEH-M の補助金

ZEH-Mは建物の規模ごとに、建築費用に対する補助金制度が用意されています。

補助金制度 補助内容
低中層ZEH-M促進事業 50万円/戸 上限:3億円/年・6億円/事業
高層ZEH-M支援事業 補助対象経費の1/2以内 上限:4億円/年・8億円/事業
超高層ZEH-M実証事業 補助対象経費の2/3以内 上限:3億円/年・10億円/事業

上記は令和4年度(2022年)の内容ですが、令和5年度予算額も決定しており、ZEH-Mの普及促進の補助金制度がスタートする見込みです。

参照元:住宅・建築物需給一体型等省エネルギー投資促進事業

エコ賃貸住宅の現在とこれから

ZEH-M のイメージ

2023年現在ZEH-Mをはじめとするエコ賃貸住宅は、まだ十分に普及しておらず、ユーザーの認知も得ている状況とは言えません。断熱性能のアップや太陽光発電システムの設置など初期費用のハードルが高く、その分賃料を高くして回収できるのかなどの課題もあります。

例えば国土交通省の検討会では、賃貸住宅における長期優良住宅認定の実績がほとんどないことが問題として取り上げられています。実際に長期優良住宅認定を受けた賃貸住宅のオーナーへのヒアリング調査では、収益上のメリットはほとんど感じられていないという結果もありました。

参照元:国土交通省 賃貸共同住宅の長期優良住宅制度における位置づけについて

しかし、2025年からはすべての建物に省エネ基準への適合が義務付けられることが決定しており、今後省エネ賃貸住宅の普及は加速していくことが予想されます。今は一般的な性能の賃貸アパート・マンションも建築・購入できます。しかし省エネ賃貸住宅がスタンダードになると、ユーザーに選んでもらえなくなってしまうかもしれません。賃貸経営は数十年単位での取り組みになりますから、物件取得の際はぜひ省エネ賃貸住宅も検討してみてください。

まとめ

ZEH-Mをはじめとするエコ賃貸住宅は、賃貸経営に取り組むオーナー様にとって、必ず把握しておくべき情報の一つです。補助金や性能義務化など、行政や法改正の動向を常にチェックして素早く対応できるようにしておきましょう。

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