居住誘導区域のメリット・デメリット|調べ方も解説
この記事では、居住誘導区域とはどんな土地なのか、基礎知識や調べ方などを詳しく解説します。
自宅・賃貸住宅・店舗などどのような物件選びでも、土地の利便性や将来性は重要なチェックポイントですよね。
特に少子高齢化によって人口が減少し始めている日本では、エリア選びの重要性が増しています。しかし、物件情報だけでは土地の将来性まではチェックできません。
そこで注目したいのが居住誘導区域です。居住誘導区域は人口密度や公共サービスの維持を目的としたエリアで、これから不動産を取得する際の目安になります。
コラムのポイント
- 居住誘導区域は自治体が人口密度の維持を掲げる地域のことで、自宅・賃貸経営どのような目的でも様々なメリットがあります。
- 居住誘導区域がつくられた背景や目的を理解し、将来性の高い土地を選ぶようにしましょう。
- 検討している土地や不動産が居住誘導区域に含まれているか調べる方法をチェックしましょう。
Contents
居住誘導区域とは?
居住誘導区域は文字通り「居住を誘導する区域」のことです。少しわかりにくいので、国土交通省が作成したイメージ図を見てみましょう。
住宅や店舗などを積極的につくり市街化を優先するエリアは、「市街化区域」と呼ばれます。逆に市街化を抑制する地域は「市街化調整区域」に設定されています。
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居住誘導区域は上の図の青い部分で、市街化区域の中でも特に開発と市街化を推進するエリアです。具体的には次のように規定されています。
居住誘導区域は、人口減少の中にあっても一定エリアにおいて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域である。このため、居住誘導区域は、都市全体における人口や土地利用、交通や財政の現状及び将来の見通しを勘案しつつ、居住誘導区域内外にわたる良好な居住環境を確保し、地域における公共投資や公共公益施設の維持運営などの都市経営が効率的に行われるように定めるべきである。
引用元:国土交通省
単純に人口密度を維持するだけでなく、交通・生活サービスのクオリティも含めた開発計画を掲げているのが特徴です。具体的に、道路や公共交通網の整備、家賃補助や住宅購入補助などの施策が掲げられています。
国土交通省は、具体的に次のようなエリアを居住誘導区に含めるべきだと規定しています。
※居住誘導区域に含むべきエリア
- 都市機能や住宅が集中している場所や生活拠点とその周辺
- 都市の中心拠点と生活拠点に公共共通でアクセスしやすいエリア
- 合併前の旧市町村の都市機能や住宅が集中しているエリア
ただ住宅や人口が多いだけでなく、都市機能が集中していることが居住誘導区域の基本的な要件になります。
居住誘導区域の目的と背景
居住誘導区域は2002年に制定された都市再生特別措置法の一環である「立地適正化計画」としてつくられた仕組みです。「コンパクトシティ計画」とも呼ばれています。
参照元:国土交通省 都市再生特別措置法に基づく立地適正化計画
コンパクトシティ計画が推進されている背景には、日本の少子高齢化と人口減少があります。人口が減少すると自治体の税収も減り、交通網や上下水道などのインフラを維持するのが難しくなります。実際に多くの自治体が財政悪化状況に追い込まれており、2006年に「財政再建団体」に指定された北海道夕張市は、2021年度も再生していません。特に人口減少率が高い地方都市では、「限界集落」と呼ばれる地域も増えています。
参照元:総務省
このような事態を防ぐために、都市機能を集中してインフラ整備にかかるコストを削減するのが居住誘導区域の目的です。
居住誘導区域のメリット
災害リスクを回避しやすい
居住誘導区域は災害警戒地域などが含まれないため、災害リスクを回避しやすいのが特徴です。
※原則として居住誘導区域に含まない地域
- 土砂災害特別警戒区域
- 津波災害特別警戒区域
- 災害危険区域
- 地すべり防止区域
- 急傾斜地崩壊危険区域
上記のような地域は原則として居住誘導区域に指定されません。つまり、居住誘導区域を選ぶことで、自動的に災害リスクが高い土地を回避できるのです。
もちろんハザードマップなどを確認する必要はありますが、大きなメリットの1つと言えるでしょう。
地価が下がりにくい
人口密度と居住性が確保される居住誘導区域は、将来まで地価が下がりにくいのも大きなメリットと言えるでしょう。
将来不動産を手放すときある程度の売却益が期待できるため、買換え・住み替えしやすくなります。自宅の売却でも有利ですが、不動産投資では出口戦略を立てやすくなるでしょう。
集客面で有利
国や自治体が積極的に居住を推進することで、賃貸・店舗の場合集客力と大きな利益が期待できるのもメリットです。
居住誘導区域は今後数十年単位で市街化が進められるため、急に人口が減少して利益が落ち込むリスクが少ないです。
数十年単位で賃貸経営や店舗経営を考える際、大きなメリットになるでしょう。
居住誘導区域のデメリット
取得費用が高い
前述したように居住誘導区域は人口密度と利便性が高いエリアなので、土地・物件の取得費用は高めなのがデメリット。
居住誘導区域に自宅を建てる場合、土地取得費用が高くなるため、建物側で妥協せざるを得なくなる可能性があります。また賃貸アパートやマンションを建設する場合は、初期費用が多くなり融資が通りにくくなる、黒字経営の難易度が高くなるなどのリスクが考えられます。
競合が多い
賃貸・店舗などの事業目的で居住誘導区域の物件に投資する場合、周囲の競合が多い点も注意すべきデメリットです。
居住誘導区域内は暮らしやすい環境が整っているため、賃貸や店舗の需要も高く、結果的に多くの競合がひしめき合うことになります。ただアパートや店舗を建てるだけでは、競合に埋もれてしまいうまく集客できない可能性が考えられます。
居住誘導区域に限った話ではありませんが、新規事業の際は綿密なエリアマーケティングを行うことが大切です。
住環境が良くない場所も多い
郊外のような広くて日当たりが良い土地を見つけにくいのも、居住誘導区域のデメリットと言えるでしょう。
人口密度が高いほど維持管理コストは下がりますが、その分周囲の建物が近くなり、日照・静粛性などの住環境では不利になります。
自宅はもちろん、アパートやマンションを建築する場合でも、住環境のチェックが重要になるでしょう。
居住誘導区域の調べ方
検討している土地が居住誘導区域かどうかは、管轄する自治体で調べることができます。
例えば千葉県千葉市の場合、地図上で居住誘導区域の範囲を確認できます。
参考:千葉市地図情報システム
ただし、立地適正化計画は自治体ごとに作成されるものなので、まだ居住誘導区域が指定されていないケースも。「○○市 居住誘導区域」などインターネットで検索しても分からない場合は、自治体の都市政策課やその地域に詳しい不動産会社に相談してみましょう。
特にこれから居住誘導区が指定されるエリアでは、その地域のノウハウが重要になるはずです。
居住誘導区域外の土地・不動産はどうなる?
居住誘導区域外は今後開発や市街化が制限され、地価が大きく下がる恐れがあります。
例えば居住誘導区域外で一定規模の開発行為や建築等行為を行う場合は、原則として市町村長への届出が義務付けられています。
※居住誘導区域外で届出が必要になる開発行為の例
- 3戸以上の住宅の開発行為
- 床面積1000㎡以上の住宅の開発行為
- 寄宿舎や有料老人ホームの開発行為
このような開発行為がコンパクトシティ計画の妨げになると判断された場合、開発規模の縮小や居住誘導区域内への誘導などが勧告される恐れがあるのです。
つまり、居住誘導区域外は住宅や大規模な店舗が建てられず、利便性が悪くなって人口が減少する可能性が高いです。自宅の購入はもちろん、不動産投資においても、居住誘導区域外は長い目で見るとリスクがあるということです。
まとめ
少子高齢化によって人口が減少するこれからの日本では、人口密度が維持される居住誘導区域を狙うのがおすすめです。ただし居住誘導区域以外の土地は、長い目で見ると人口が減少して利便性や資産価値が低下する恐れがあります。なるべく地元に精通する不動産会社に相談して、将来性のある土地や不動産物件を選びましょう。
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