農業をしない人の農地相続リスクと対策!相続税や手続きも解説
実家が農業を営んでいる場合、相続財産の中に農地が含まれていて悩むケースは少なくありません。相続する方が全員別の職業に就いている場合、農地を相続しても扱いに困る可能性は高いです。
今回は、農業をしない人の農地相続というテーマで、考えられるリスクや対策を解説します。
相続税や手続きについてしっかり学び、農地の相続で困らないように準備しておきましょう。
コラムのポイント
- 農地を相続して放置すると、管理コストや税金などさまざまなリスクが発生します。
- 農地の相続税評価方法、納税猶予の仕組みを覚えて、相続税で慌てないようにしましょう。
Contents
農業をしない人の農地相続リスクとは?
ご実家の農業を継いでいない方が農地を相続すると、次のようなリスクが発生します。
管理の手間と費用がかかる
農業を営んでいない場合も、農地を所有しているだけで管理の手間と費用が発生します。作物を育てなくても雑草は生えるため、草刈りやメンテナンスをしなければいけません。
仕事をしながら農地の管理をするのはかなり難しく、外注するならそれなりの費用がかかります。農地を活用する予定がなくても、相続すると毎年決まった費用が出て行ってしまうのです。
放置すると不法投棄や害虫が発生する
管理費用や手間をかけられないからと農地を放置すると、荒地になり不法投棄や害虫・害獣の発生原因となるのも大きなリスクです。
農地は衛生環境が悪化すると周囲にも影響を及ぼしてしまうため、近隣からのクレームの原因になる可能性があります。放置が進むと耕作放棄地となり作物を育てることが難しくなり、資産価値が低下してしまいます。
農地転用や売却が難しい
田んぼや畑は農地法の管轄下にあり、農地転用による活用や売却が難しく扱いに困るケースも多いです。
農地にはアパートや駐車場をつくれず、農業以外の用途に活用することはできません。
農業委員会の許可を受ければ農地転用は可能ですが、必ず申請が受理されるとは限らず、ハードルは高めです。農地を購入できるのは農業委員会の許可を受けた農家や農業従事者に限定されるので、そのままでは売却も難しいです。
相続トラブルの原因になることも
農地相続人の中に誰も農業を継ぐ方が居ない場合、相続トラブルの原因になるリスクもあります。
前述したように農地の相続にはさまざまなリスクがあるため、農業をしないならなるべく引き受けたくないですよね。売却して法定相続分で分割するのも難しく、遺産分割協議がまとまらないケースも多いようです。
農地にも相続税はかかる?
農業をしない人が農地を相続する場合でも相続税は発生します。農地の広さや資産価値によっては大きな負担になることもあるので、基本的な仕組みを把握しておきましょう。
農地の相続税評価方法
農地法では、農地を次の4種類に分類して相続税の評価をします。
- 純農地
- 中間農地
- 市街地周辺農地
- 市街地農地
出典:国税庁 農地の評価
純農地・中間農地は、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する倍率方式で評価します。市街地農地は「宅地比準方式」「評価倍率方式」などを用いて、相続税評価額を求めます。市街地周辺農地は、その土地が市街地農地であると仮定した金額の80パーセント相当が相続税評価額となります。
ここではすべてを解説するのが難しいため、農地の種類によって評価方法と相続税が異なるということを覚えておいてください。
農地の納税猶予とは?
「農地には相続税がかからない」という説もありますが、これは「農地の納税猶予の特例」のことだと考えられます。
納税猶予とは、相続する農地と相続人が一定の条件を満たすと、相続税の一部が免除される制度です。ただし、「相続後農業を続けること」が前提条件となっているので、農業をしない人は利用できません。
原則的に、農業をしない人が農地を相続する場合、相続税が発生すると考えておきましょう。
参考:国税庁 農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例
農地相続の手続き方法
農地相続の手続きは、大きく分けると次の2つのステップになります。
- 相続登記
- 農業委員会へ相続の届出
相続登記の手続きは一般的な不動産と同じで、法務局にて所有権移転登記を行います。
続いて、農地を管轄する農業委員会へ、相続の届出が必要となります。相続開始から10か月以内が期限となりますので、なるべく早めに手続きしましょう。
農地の売買と違い、相続の場合は原則的に農業委員会の許可は必要ありません。しかし法定相続人でない人が農地を相続する場合は、許可が必要になるケースもあります。農地を相続することになったら、早めに農業委員会に相談して詳しい手続き方法を相談しておくとスムーズです。
農業をしない人の農地相続対策!
前述したように農業をしない人の農地相続にはさまざまなリスクがありますので、次のようにさまざまな対策を検討してみましょう。
農業を始める
農地の相続をきっかけとして、ご自身で農業を始めてみるというのも一つの考え方です。
初期投資はかかりますが、所有する農地なら地代家賃が発生しないので、うまく収益を上げられる可能性が高いでしょう。
また、相続後に農業を引き継ぐ場合、前述した納税猶予制度の対象となり、相続税を軽減できる可能性もあります。
貸し出す
農業を始めたい人に貸し出して、定期的な家賃収入を得るのも対策になります。
自分で管理しなくても農地の荒廃を防ぐことができ、出費を抑えつつ不労所得を得られるので一石二鳥。
「農地中間管理機構(農地バンク)」を利用して農業をしたい人とマッチングしたり、市民農園として貸し出したりする方法もあります。貸し出しによる農地活用方法はこちらのコラムでも解説しています。
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売却する
農地をご自分で活用するのが難しいなら、早めに売却する方法も検討しましょう。前述したように農地は売却の難易度が高いですが、知り合いに買ってもらうなどの方法あります。
また、農地売却に強い不動産会社に相談すれば、農地法の条件を満たす買い手を見つけてもらえる可能性も高くなります。地元に精通している不動産会社に相談してみましょう。
農地転用で活用する
地目が畑や田の農地はそのままでは用途が限られますが、農地転用によって活用の幅を広げられるケースもあります。
農地転用とは、都道府県知事や市町村長の許可を受け、農地を宅地などほかの用途に変更することです。一定の条件を満たす農地は、農業委員会に申請して農地転用できる可能性があるのです。
農地転用できれば、太陽光発電・アパート建築・駐車場経営など、活用方法が広がり大きな収益が期待できます。資産価値が高まり売却できる可能性も高くなるので、1つの選択肢として検討してみましょう。
相続放棄する
農地を相続するリスクが多く、ほかの対策が難しい場合は、相続放棄する方法もあります。
ただし、農地だけ相続放棄することはできず、すべての財産を相続できない点に注意が必要です。現金や不動産など、ほかの財産と合わせても、農地を相続しない方が良いケースでは相続放棄が有効な対策になるでしょう。
相続土地国庫帰属制度で国に返す
相続放棄が使えないときは、相続土地国庫帰属制度で農地だけ国に返還する対策も。
2023年にスタートした相続土地国庫帰属制度を使えば、一定の条件を満たせば農地を手放すことができます。負担金や時間はかかりますが、ほかの対策が難しいときは検討してみる価値があるでしょう。
〈関連コラム〉
相続土地国庫帰属制度で売れない土地を手放せる?手続きや負担金を解説
まとめ
農地の相続では、手続きや相続税、その後の運用など考えることが多いです。慌てることが無いように、なるべく早めに準備をして相続に備えましょう。
農地の活用・売却に強い不動産会社に相談して、農地を放置するリスクに対策することも大切です。
千葉県八千代周辺の農地相続のご相談は、総合不動産会社のオカムラホームにご相談ください。そのまま活用・売却、農地転用によるアパート建築など、さまざまな方法で農地相続をサポートいたします。すでに農地をお持ちの方はもちろん、これから相続予定の方もお気がるにご相談ください。