管理不全空家とは?認定基準や特定空家との違い、固定資産税等のデメリットを回避する方法を解説

管理不全空家の認定基準と特定空家との違い

このコラムでは、令和5(2023)年12月の空家法改正によって新たに設定された「管理不全空家」に該当する空き家の基準や、「特定空家」との違い、認定された場合のデメリットについて解説します。

特定空家や管理不全空家にならないための対策や、空き家の活用方法、除却(解体)に使える補助金など役立つ情報も紹介します。

現在、空き家を所有している方や、これから親の実家等を相続する予定の方は参考にしてください。

 


コラムのポイント

  • 2023(令和5)年の空家法改正で、行政は特定空家になる可能性のある空き家を「管理不全空家」に認定することで、所有者に指導などを行えるようになりました。
  • 管理不全空家に認定されて指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性があります。
  • 空き家を所有していて将来使用する予定のない場合は、早めに「売る」「貸す」「解体する」などの方針を決め、各種サービスや助成制度を活用しながらスピーディに実行に移すことが重要です。

 

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管理不全空家とは?特定空家との違い

はじめに、管理不全空家と特定空家の違いについて分かりやすく解説します。

「特定空家」は“著しく危険な状態の空き家”

空き家の危険性のイメージ

(画像引用元)政府広報オンライン|空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!

「特定空家」は、平成27(2015)年2月26日に施行された「空家等対策特別措置法(以下「空家法」)」によって定められた空き家の区分です。

壁や屋根が破損していて倒壊の危険性が高いなど、そのまま放置すると周囲に著しく悪影響を及ぼす空き家を指します。

「特定空家」と認められると、市区町村は所有者に適切に管理をするように助言や指導を行い、改善が見られない場合は勧告や命令を行います。

所有者が命令に従わない場合、50万円以下の過料に処される場合があるほか、行政による強制撤去等の対応が行われる場合もあります。

さらに、空家法に基づく勧告を受けた特定空家の敷地は、固定資産税及び都市計画税の軽減措置が適用されなくなるため、毎年の税負担が重くなります。

(参考)国土交通省ホームページ|住宅:空き家対策 特設サイト

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「管理不全空家」は特定空家“予備軍”の空き家のこと

管理不全空家の新設(国土交通省ホームページ)

(画像引用元)国土交通省ホームページ|住宅:空き家対策 特設サイト(空家法とは)

「管理不全空家」は、令和5(2023)年12月の空家法改正によって新たに設定された空き家の区分です。

改正前の空家法は、特定空家の状態になる前の段階では、市区町村は指導や勧告といった措置を取ることができませんでした。

また、特定空家になってからの対応だけでは、増え続ける空き家への対応にも限界があります。

空家法改正後は「今の状態のまま放置すれば特定空家になる可能性のある空き家」に対して「管理不全空家」に認定することで、行政が所有者に指導などを行えるようになったのです。

 

管理不全空家は「空き家の適切な管理」を促すための措置

管理不全空家と特定空家の違い

(画像引用元)政府広報オンライン|空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!

管理不全空家と特定空家の大きな違いは以下の3つにまとめられます。

  • ①認定基準
  • ②行政代執行の可否
  • ③所有者への行政の介入

今回の法改正における「管理不全空家の新設」は、空き家を放置せず、所有者に適正な管理をより強く促すのが大きな目的です。

そして、「管理不全空き家」はあくまで空き家の管理を促すための措置であるのに対し、「特定空き家」は命令や強制撤去などの形で行政が直接介入できる点が大きな違いです。

ただし、管理不全空き家に認定されて指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性がある点は特定空き家と同様です。

所有している空き家に対して自治体から「管理不全」と認定され改善要請があった場合には、速やかに自治体に連絡し、現地状況を確認した上で適切な対処を講じることが重要です。

 

管理不全空家に認定されるおそれのある空き家

管理不全空家に認定されるおそれのある空き家

管理不全空家に認定される恐れがあるのは、具体的には以下のような状態の空き家になります。

  • 壁や屋根、窓などの腐食・破損が進んでいる
  • 雑草や樹木が管理されていない
  • 敷地内にゴミなどが散乱、放置されている

一方、特定空家に認定される基準は以下の通りです。

  • 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある
  • 衛生上著しく有害な状態(アスベスト飛散やゴミの異臭など)
  • 適切に管理されていないために著しく景観を損なっている
  • 空き家周辺の生活環境保全のために放置することが適切でない(木の枝の越境など)

特定空家は著しく危険、有害なために放置することが不適切である状態の空き家に対して認定されます。

管理不全空家は自治体の早期介入により管理を促すことで、特定空家の増加を防ぐことを目的としています。

 

特定空家・管理不全空家にならないための対策

特定空家・管理不全空家にならないための対策

所有する空き家が管理不全空家や特定空家に認定されると、固定資産税の負担が増えるなどのデメリットが発生します。デメリットを回避するための対策について解説します。

 

相続関係者で話し合っておく

空き家の発生原因は、半数以上が相続によるものと言われています。

実家を相続する予定があるなら、親御さんが元気なうちによく話し合い、希望や方針を固めておきましょう。

相続後の空き家に関する選択肢の例

  • 自分たちで住む
  • 空き家として所有し管理していく
  • 賃貸などで活用する
  • 建物をそのままにして売却する
  • 解体して更地にして所有する
  • 更地にして売却する

上記の一例のようなさまざまな可能性を考えた上で話し合うことで、空き家になったまま放置されるリスクを防げます。

 

相続後の方針に合ったサービスや制度を調べておく

管理不全空家や特定空家の認定に認定されることを防ぐには、空き家をそのまま放置せず適切に管理したり、早めに売却、活用などの対策を取ったりすることが重要です。

相続した空き家を今後使用する予定がないなら、早めに方針を決めてそれぞれに合ったサービスや助成制度などを活用して実行に移すことがポイントになります。

①維持管理を続けて所有する場合

空き家を当面所有し続けるなら、建物・敷地の定期的なメンテナンスが必要になります。

自分たちでメンテナンスする以外に、費用はかかりますが空き家管理委託会社に依頼する方法もあります。

国土交通省の空き家対策サイトでは、空き家の適切な管理の指針である「空き家管理チェックリスト」が公開されています。チェックリストを使うと空き家の現状と必要な管理方法、対策が分かりますので参考にしてください。

国土交通省空き家対策チェックリスト

(出典)国土交通省ホームページ|空き家対策特設サイト(空き家の管理のやり方)

 

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②空き家を売却する場合

空き家の継続的な管理が難しい場合や、活用する予定がない場合は、売却を検討しましょう。空き家の劣化が進むほど資産価値が落ちて売りにくくなってしまうため、なるべく早めに動き出すことが重要です。

一定期間内に要件を満たして売却できれば「空き家特例」で売却益にかかる譲渡取得税を節税できる可能性もあります。

空き家の売却は地域の不動産会社に相談したり、空き家バンクに登録したりする方法があります。

(参考)全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集(国土交通省ウェブサイト)

 

売却・処分方法の相談先一例

  • 不動産会社を通じて仲介売却する
  • 不動産会社に買取してもらう
  • 空き家バンクに登録する
  • 周囲の地権者に譲る
  • 相続土地国庫帰属制度で国に返す

 

それぞれの売却・処分方法のメリット・デメリットは以下のコラムで解説していますので合わせてお読みください。

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③空き家を解体(除却)する場合

空き家を解体する場合は、まずは市区町村の担当部署に相談しましょう。民間の解体業者を紹介してくれる場合があります。

また、老朽化した空き家を解体する場合、国や市区町村の補助金を受けられることもあります。空き家がある市区町村のウェブサイトで調べるか、窓口に問い合わせてみましょう。

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さらに、相続後一定期間内に空き家を解体して更地を売却すると、譲渡所得税の特例制度(空き家特例)を活用できる場合もあります。

詳細は以下の関連コラムをお読みください。

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④空き家をリフォーム・改修する場合

空き家に自分で住んだり賃貸として活用したりする場合は、事前にリフォームすることも考えられます。

ただし、売却しやすくするために安易に大掛かりなリフォームをするのは要注意。なかなか売却できなかった場合、リフォーム費用が無駄になってしまいかねません。

売却を依頼する不動産会社に、どんなリフォームが適切なのかを相談してから検討することをおすすめします。

また、一定の要件を満たしてリフォームする場合は、国や各地方自治体の補助金を受けられる場合もあります。「○○市 住宅 補助」「○○市 リフォーム補助金」などのキーワードで検索するほか、以下のサイトでも調べられます。

(参考)
国土交通省ホームページ|住宅リフォームの支援制度
住宅金融支援機構ホームページ|空き家関連情報サイト

以下のコラムでは、空き家の活用、解体、リフォーム、売却等に使える補助金や減税制度をジャンル別に詳しく紹介しています。

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空き家に使える補助金と減税制度|活用・解体・売却などジャンル別に紹介

 

まとめ|使わない空き家は放置せず早めに対処を検討しよう

2023年の空家法改正で、行政は特定空家になる可能性のある空き家を「管理不全空家」に認定することで、所有者に指導などを行えるようになりました。

管理不全空家に認定されて指導に従わず勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性があります。

空き家は放置される期間が長くなればなるほど、老朽化や損傷が進み、売買や賃貸などが難しくなってしまいます。

空き家を所有していて将来使用する予定のない場合は、早めに「売る」「貸す」「解体する」などの方針を決め、各種サービスや助成制度を活用しながらスピーディに実行に移すことが重要です。

オカムラホームは、ご実家の相続や活用、リフォーム、売却、維持管理に関することまで、空き家のさまざまなお悩みを解決するためにサポートをいたします。

空き家でお困りの方や、これからご実家を相続する予定の方はお気軽にご相談ください。

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