固定資産税は更地と建物がある土地ではどちらが高い?住宅用地の特例で節税する際の注意点も解説
このコラムでは、土地に建物がある場合と更地の場合で、どちらの固定資産税が高くなるのか、そしてその理由について解説します。
建物(家屋)がある土地や、一定要件を満たすマイホームに対して適用される「固定資産税の軽減制度」や、軽減制度を活用して節税する際の注意点についても解説します。
更地に建物を建てて土地活用を検討している方や、空き家を相続して税負担が気になるという方は参考にしてください。
コラムのポイント
- 建物(家屋)のある土地は、住宅用地の軽減措置などが適用されるため、更地よりも固定資産税や都市計画税が安くなりやすい傾向があります。
- ただし、エリアの土地・建物評価などによっては、建物を建てたからといって必ず固定資産税や都市計画税が安くなるとは限りません。
- 税金対策で所有する土地に建物を建築する場合は、建物自体の評価額や税額をシミュレーションし、建てた後の活用方法や運用方針まで見据えた上でプランニングすることが重要です。
固定資産税とは
はじめに、固定資産税の仕組みについて簡単におさらいしましょう。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や家屋などの固定資産を所有している人に課される税金です。
利用していない空き地や空き家でも、所有していれば固定資産税を支払う義務があります。
固定資産税の計算方法
固定資産税の税額は以下の計算方法で算出します。
課税標準額 × 税率(1.4%)= 税額
税率は土地・建物ともに課税標準額に対して1.4%が基本ですが、各市町村ごとの条例によって異なる場合もあります(千葉市の場合は1.4%)。
また、固定資産税は所有する不動産ごとに課せられます。
例えば、一戸建てを所有している場合は建物と土地それぞれに対して固定資産税額が算出された上で、両方が課税されます。
土地、建物の課税標準額算出方法
土地・建物(家屋)の課税標準額は、原則として3年ごとに実施される「評価替え」による固定資産評価基準が用いられます。
土地と建物(家屋)それぞれの評価方法は以下のようになっています。
土地 | 宅地・農地などの地目別に、売買実例価額などを基礎として評価額を算定 ※宅地については、地価公示価格などの7割を目途に評価額を算定 |
建物(家屋) | 再建築価格および経年減点補正率などに応じて評価額を算定 ※再建築価格=同じ建物を同じ場所に新築する場合に必要な建築費 ※経年減点補正率= 家屋建築後の年数経過に応じた減価率 |
更地の方が固定資産税が高くなるのはなぜ?
結論から言うと、同じ面積・評価額の土地の場合、家屋が建っていない更地の方が、固定資産税が高くなりやすい傾向があります。
更地の固定資産税が高くなりやすい理由について詳しく解説します。
家屋のない土地は「住宅用地の軽減措置」が適用されないから
不動産のうち居住用の建物が建てられている土地は「住宅用地に対する課税標準の特例」によって、土地の評価額が減額される軽減措置があります。
建物が建っている土地を「宅地」と呼び、そのうち土地の固定資産税・都市計画税の軽減措置が適用される範囲を「住宅用地」と呼びます。
住宅用地のうち、住宅1戸につき200㎡までの部分を「小規模住宅用地」、200㎡を超える部分を「一般住宅用地」とし、それぞれの部分について土地の評価額が減額されます。
※住宅用地の面積は家屋の床面積の10倍が限度です。
住宅用地の種類 | 土地の固定遺産税評価額の軽減 | 土地の都市計画税評価額の軽減 |
---|---|---|
小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡までの部分) | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
例えば、親が住んでいた家を相続した後、家屋を解体して更地にすると住宅用地の軽減措置が適用されなくなるため、土地部分の固定資産税・都市計画税がこれまでより高くなってしまうのです。
更地はマイホームの固定資産税軽減措置が受けられないから
土地・建物自体の評価額によっても変わってきますが、更地の場合、住宅用地の軽減制度が適用されないことに加えて、家屋に対する減税措置も受けられないため、トータルで税負担が大きくなる可能性があるのです。
千葉市の例では、マイホームで要件を満たすと新築は一般住宅で3年度分、長期優良住宅で5年度分、リフォームは実施後1年度分、家屋部分の固定資産税が減額されます。
固定資産税(家屋)の減額(千葉市)
家屋の種類 | 減額期間 | 減額率(居住部分のみ) |
---|---|---|
(新築)一般住宅 | 新築後3年度分(3階建以上の中高層耐火住宅等は5年度分) | 固定資産税額の1/2 (1戸当たり120㎡まで) |
(新築)認定長期優良住宅 | 新築後5年度分(3階建以上の中高層耐火住宅等は7年度分) | 固定資産税額の1/2 (1戸当たり120㎡まで) |
(リフォーム)住宅耐震改修 | 改修後1年度分 | 固定資産税額の1/2 改修後認定長期優良住宅に該当する場合は2/3 (1戸当たり120㎡まで) |
(リフォーム)住宅のバリアフリー改修 | 改修後1年度分 | 固定資産税額の1/3 (1戸当たり100㎡まで) |
(リフォーム)住宅の省エネ改修 | 改修後1年度分 | 固定資産税額の1/3 改修後認定長期優良住宅に該当する場合は2/3 (居住部分のみ。1戸当たり120㎡まで) |
大規模の修繕等が行われたマンション | 改修工事が完了した年の翌年度分(1年度分) | 固定資産税額の1/2 (1戸当たり100㎡まで) |
減額が適用される詳細な要件は各自治体のホームページ等で確認してください。
土地の評価額は経年では安くならないから
建物(家屋)の評価は建築後の年数に応じた補正率(経年減点補正率)によって調整されるため、建物(家屋)部分の固定資産税額は年数が経つごとに安くなっていきます。
しかし、土地は経年によって劣化する物ではなく、あくまでも用途地域の区分や路線価などが評価額に影響します。
そのため、建物のように経年で固定資産税が安くなることはありません。
したがって、住宅用地の軽減措置やマイホーム減税が適用でき、年数が経つと家屋部分の税負担が減っていく家屋付きの土地の方が、更地よりも税金面で有利になりやすいのです。
土地の固定資産税を下げる方法
土地部分の固定資産税の負担を軽減する方法を紹介します。所有する土地が広く、地価が高いエリアほど恩恵を受けやすい方法ですので参考にしてください。
①建物を建てて住宅用地の軽減措置を適用させる
現在更地を所有している場合、建物を建てて住宅用地の軽減措置を適用させることで、土地の固定資産税の負担を軽減できる場合があります。
自分で住むマイホームではない、アパートやマンションなどの共同住宅も住宅用地の軽減措置の対象になります。戸建てや共同住宅を新築することで最大で7年度分、建物部分の固定資産税の減額も受けられます。
また、住宅用地は住宅1戸あたり200㎡(約60.5坪)までに評価額1/6の軽減措置が適用されます。
つまり、1戸あたり200㎡以下で戸数の多いアパートやマンションを建築すれば、より多くの部分に軽減税率が適用され節税効果も大きくなるということです。
したがって、200㎡を越える広い土地活用で固定資産税の節税を考えるなら、戸数を多く確保できるアパート、マンションなどの共同住宅を建てるのがおすすめです。
②土地を分筆して評価を下げる
広い土地を複数の用途で使用している場合などでは、「分筆」を行うことで節税につながるケースがあります。
※分筆…一筆の土地を数筆の土地に法的に分割すること
不動産は一筆単位で固定資産税の評価額が算定されます。
- 固定資産税路線価が異なる2つの道路が面している
- 敷地内に用途の異なる複数の建物がある
上記のような場合、分筆してそれぞれの評価を分けることで、全体の税額負担が減る可能性があります。
ただし、分筆には費用と手間がかかり、建物の再建築や増改築がしにくくなる可能性もあるため、減税のメリットとデメリットを比較した上で慎重に検討しましょう。
住宅用地の特例措置で固定資産税を安くしたい場合の注意点
住宅用地の特例措置を活用して固定資産税を安くしたい場合に知っておきたい注意点を解説します。土地活用を検討する際の参考にしてください。
注意点①建物を建てれば必ず固定資産税が安くなるとは限らない
更地に建物(家屋)を建てることで、土地部分は住宅用地の軽減措置を受けられます。
ただし、土地部分の固定資産税の軽減幅よりも、建物部分の税額が上回る場合は、結果的に全体の税負担は高くなってしまう点に注意が必要です。
土地の評価が高い地域では土地部分の固定資産税の軽減幅も大きくなるため、建物を建てることで今までよりも税金が安くなる可能性が高くなります。
逆に、土地評価が低い地域では、建物の評価額次第では全体の税負担が重くなる可能性もあるということです。
更地に建物を建てる場合は、建物部分の評価額や固定資産税がいくらになるのかを事前にシミュレーションしておくことが重要になります。
注意点②空き家は住宅用地の特例が適用されないケースに注意
土地に建つ建物が空き家の場合、「特定空家」「管理不全空家」に指定されると住宅用地の特例が適用されない点にも注意が必要です。
「古い実家を相続したものの、遠方なので管理できない」「処分方法を決められないまま長期間放置している」という場合は要注意。空き家の状態を早めにチェックし対策を取る必要があります。
「管理不全空家」に認定される恐れがある空き家
- 壁や屋根、窓などの腐食・破損が進んでいる
- 雑草や樹木が管理されていない
- 敷地内にゴミなどが散乱、放置されている
「特定空家」の認定基準
- 倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある
- 衛生上著しく有害な状態(アスベスト飛散やゴミの異臭など)
- 適切に管理されていないために著しく景観を損なっている
- 空き家周辺の生活環境保全のために放置することが適切でない(木の枝の越境など)
上記の空き家に認定されると、税負担が増えるだけでなく、時が経過するごとに老朽化や損傷が進み、売買や賃貸などが難しくなります。
また、行政の命令に従わない場合、罰則や強制撤去などの行政代執行を受ける可能性もあります。
相続した空き家の管理が難しい場合や活用する予定がない場合は、早めに行政や不動産会社などに相談し適切な対処法を検討することが重要です。
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注意点③建物を建てるなら運用計画・出口戦略までしっかり立てた上で
固定資産税のためだけに建物を建てるのではなく、使い道やメンテナンス、運用計画、建物を最後どうするかなど、緻密な戦略を考えた上で建てることが大切です。
賃貸住宅なら赤字になれば固定資産税を節税した意味がなくなるかもしれませんし、家を建てても誰も住まなければ結局は空き家になってしまうかもしれません。
更地に建物を建てて活用することが難しい場合は、早めに売却を検討するのも1つの方法です。
手放すことで固定資産税や管理の負担がなくなるほか、早めに売却すれば空き家特例などを利用して譲渡所得税を軽減することもできます。
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まとめ
建物(家屋)のある土地は、住宅用地の軽減措置などが適用されるため、更地よりも固定資産税や都市計画税が安くなりやすい傾向があります。
ただし、エリアの土地評価や建物評価などによっては、建物を建てたからといって必ず固定資産税や都市計画税が安くなるとは限りません。
税金対策で所有する土地に建物を建築する場合は、建物自体の評価額や税額をシミュレーションし、建てた後の活用方法や運用方針まで見据えた上でプランニングすることが重要です。
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