ビル経営のメリット・デメリット|失敗を防ぐ対策や利回りシミュレーションも紹介
2025.02.04
このコラムでは、オフィスビルや商業ビルなどの「ビル経営」による土地活用のメリット・デメリットについて解説します。
ビル経営に向いている立地やビルオーナーに向いている人、失敗を防ぐためのリスク対策、実質利回りのシミュレーションも紹介。
所有している土地や相続予定の土地でビルなどの不動産経営をお考えの方は参考にしてください。
コラムのポイント
- ビル経営はアパート、マンション経営より初期費用は高めですが、その分高い収益性が見込める土地活用方法です。
- ビル経営は景気によって左右される面が大きく、安定して収益を上げるためには幅広い経営の知識や賃貸管理のスキルが不可欠になります。
- ビル経営を検討するなら、ビルの建設や管理のノウハウが豊富な、信頼できる不動産会社や建築会社をパートナーに選ぶことが重要です。
Contents
ビル経営とは
ビル経営とは、ビルにテナントを誘致し、賃料収入で利益を得る不動産投資の1種です。
テナント経営向けのビルを購入するほか、所有している土地にビルを建設して経営を始めることもできます。
初期費用はアパート・マンション経営よりも高額ですが、その分高い収益性を望めるのがビル経営の特徴です。
ビル経営による土地活用のメリット
ビル経営のメリットについて、もう少し詳しく解説します。
賃貸住宅経営に比べて高い収益率が期待できる
一般的に、商業ビルのテナント賃料はアパートやマンションなどの1.5倍~2倍が相場のため、高い収益率が期待できる点がメリットです。
また、事業者向けの賃貸物件は景気に連動して賃料を上げやすいという特徴もあります。
収益性が高くなるほど、短い期間での投資回収が可能になります。
複数のテナントを誘致してさらに収益性を高められる
ビルはテナントを複数誘致できるので、異なる業種の集客力を利用して更なる収益性アップ効果が期待できます。
例えば、1階にはカフェやコンビニエンスストア、上階にはオフィスやクリニックを配置するなどの工夫で、建物全体としての付加価値を向上させられます。
地域や市場のニーズに応じて戦略を立て差別化を図れば、長期的に安定した収益を見込めます。
建築物の自由度が高い
賃貸住宅は快適な住環境に配慮するための規制が多いため、土地の所在によっては住宅を建てられないケースも。
しかし、建築基準法において住宅を建てられないような土地でも、事業用のオフィスビルや商業ビルなら建築できる可能性があります。
また、商業ビルは住宅と異なり、用途に応じて多様な建築プランを立てられる点もメリット。デザインや設備などにこだわれば、独自の強みを作ることもできます。
相続税対策に効果的
所有する土地にビルを建てることで、不動産の相続税評価額を抑えられる点もメリットです。
土地の評価は、更地の状態では100%評価ですが、ビルなどを建てて活用することで貸家建付地となり、更地の80%程度に圧縮されます。
(参考)国税庁ホームページ|No.4614 貸家建付地の評価
また、建物は賃貸することで固定資産税評価額から借家権割合が差し引かれ、実際の建築費用の42%程度に抑えられます。
さらに、要件を満たせば「小規模宅地等の特例」を適用でき更なる節税も可能です。
(参考)国税庁ホームページ|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
入居者トラブルが少ない
商業ビルの入居者は基本的に法人となるため、アパートなどの居住用物件と比べてトラブルが少ない点もメリットです。
異なる業種のオフィスや飲食店などがフロアごとに配置されるため、互いに干渉しあうことが少なく、テナント同士のトラブルも起きづらい構造になります。
他の用途に転用しやすい
ビル経営の場合、テナントとの賃貸借契約は「定期借家契約」とするケースが多くなっています。
例えば、オフィスとして使用していたテナントとの契約が終了すれば、商業ビルなど他の用途に転用できるため、需要に合わせた柔軟な経営が可能です。
ビル経営に向いているケース
ビル経営に向いている立地や条件についてまとめます。
商業施設やオフィスに適した土地
一般的に、以下のような立地は商業施設やオフィスの誘致に適しており、ビル経営が安定しやすくなります。
◎人通りの多い街中 | 多くの人の目に留まりやすく集客力が高い |
◎交通の便の良い立地 | 駅チカ、主要道路に面しているなど通勤、買い物に便利な立地 |
◎開発計画が進行中の地域や、商業施設が充実している地域 | 将来的に資産価値の上昇が見込めるため、長期的に安定経営が狙える |
◎形状が整っていて地盤の状態が良い土地 | 地盤が弱い土地や変形地は建築コストが高くなる可能性がある |
ただし、ビルの目的や種類によっても向いている土地は変わってきます。
- オフィスビル…交通の便が良く企業が集まるオフィス街
- ファッション、飲食業や小売業などの商業ビル…人の集まる繁華街
- クリニックなど医療関係のメディカルビル…通勤に便利な駅チカやファミリー層の多いエリア
- 塾や保育所など教育系ビル…ファミリー層の多いエリア
現在の市場調査はもちろん、エリアの将来性も踏まえてテナントの業種などを選択することが重要になります。
地価の高いエリアで相続税対策をしたい人
大都市圏や人口密集地域は土地の価値が高騰しやすいため、相続税も高額になりがちです。
前章で解説したとおり、更地のまま所有するよりも、建物を建てて賃貸経営することで、継続収入を得られるだけでなく、相続税対策にもなります。
〈関連コラム〉
貸家建付地による相続税対策をわかりやすく解説|相続税評価額の計算方法もチェック
ビル経営の収入と実質利回りシミュレーション
ビル経営における支出と収入は主に以下のような項目で成り立っています。
〈支出〉 | 〈収入〉 |
---|---|
①初期費用
②運用費用(維持管理費)
|
①主な収入源
②副次収入
|
ビル経営の実質利回りシミュレーション
所有している土地にビルを建てて経営を始めた場合の、実質利回りのシミュレーション結果を紹介します。
〈シミュレーション条件〉
土地 |
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---|---|
建物 |
|
収入 |
|
維持管理費 |
※今回は含みませんが実際には火災保険料などもかかります。 |
〈シミュレーション結果〉
①表面利回り
表面利回りは、「投資金額(物件価格/建築費用)に対する1年間の家賃収入の割合」を算出します。
表面利回り(%) = 年間家賃収入 ÷ 購入/建築費用 × 100
↓
1,440万円 ÷ 1億1,000万円 × 100 = 13.09%
②実質利回り
実質利回りは表面利回りの計算式に、購入・運用にかかる諸費用をプラスしたもので、より実際に近いシミュレーションになります。
実質利回り(%) = (年間家賃収入 - 運用にかかる年間諸費用) ÷ (購入/建築費用 + 購入/建築時諸費用) × 100
↓
(1,440万円 - 346.5万円) ÷ (1億1,000万円 + 1,650万円) × 100 = 8.64%
〈関連コラム〉
アパート経営における利回りの目安は?実質利回りの計算方法や中古/新築のシミュレーションも紹介
ビル経営のデメリット:「儲からない」と言われる理由は?
ビル経営は「儲からない、難易度が高い」と言われることがあります。その理由とデメリットについて解説します。
初期費用が高い
テナントビルは、利便性の高い立地で賃貸住宅よりも大規模な建物を建築するため、初期費用が高額になりがちです。
さらに、ネット環境、電気や空調、セキュリティ、防音設備など、テナントの運営に必要な設備も整える必要があります。
初期費用が高く借入額が多いと、毎月の返済がキャッシュフローを圧迫することになります。そのため、事前に綿密な経営計画を立てておかないと、高額な初期投資を回収できない可能性があります。
経営状況が景気に左右されやすい
ビル経営は、不景気で企業の倒産や事業縮小が増えると空室率が上昇し、一気に収益が落ち込む可能性があります。
一方、アパートやマンションなど賃貸住宅は生活の基盤となる住居を提供するため、景気の影響で入居者が一気に退去してしまうリスクは低いと言えます。
空室時の負担が大きい
商業ビルでテナントが退去した場合、次の入居付けのための広告費や設備投資、リフォーム費用など、空室時の経済的負担が賃貸住宅よりも大きくなります。
また、空室状態が続くと、固定資産税やメンテナンス費用、ローン返済などの支出だけがかさむ一方になりキャッシュフローが悪化する恐れがあります。
賃貸住宅よりも固定資産税が高い
アパートやマンションなど住宅を新築した場合、一定期間固定資産税の軽減措置を受けられます。
しかし、ビルのような事業用不動産には減税措置が適用されることはほぼないため、固定資産税の負担が大きくなります。
幅広い経営の知識が必要
ビル経営は、建物の管理とテナント経営の両方でノウハウが必要となり、賃貸住宅経営よりもさらに幅広い知識とスキルが求められます。
条件の良い立地には競合も多いため、市場動向を常にチェックし、テナントのニーズに合わせた対応や良好な関係づくりのための戦略を継続して実行していく必要があります。
ビル経営の失敗を防ぐリスク対策
ビル経営を始めるにあたって知っておきたい、失敗や後悔を防ぐリスク対策についてまとめます。
余裕を持った自己資金を確保する
ビルの建築費用や購入費は高額になるため、ローンを組むケースが多くなります。
空室率の増加や予想外の修繕で出費が続くなどでキャッシュフローが悪化すると、借入金の返済が滞る可能性があります。
返済が厳しくなるリスク対策には、できるだけ多く自己資金を確保し借入額を減らすことが有効です。
ビル経営の自己資金は物件価格の30%程度が目安になります。
テナント需要・集客力の高いエリアを選ぶ
テナントビル経営で安定した収益を得るためには、飲食店や医療、教育施設など商業施設の需要がある場所を選ぶことが重要です。
また、人通りが多く目に付きやすい、交通アクセスが良いなど集客力の高さもポイントになります。
現在所有している土地が賃貸需要、集客力のどちらも少ない場合は、不動産の買い替えを検討するのも1つの方法です。
テナントを誘致しやすい工夫
テナントが長期的に事業を運営しやすくなるような工夫をすることで、入居率を高め安定経営を目指せます。
〈テナントを誘致しやすい工夫の例〉
- 需要が見込まれる業種に合わせて設備を整える
- テナントが光熱費を抑えられる省エネ性能の高い設備を導入する
- エリアの顧客層に合わせた外観デザインにする
テナントに向けた貸出ルールを作る
賃貸借契約時には、テナントに向けた貸出ルールを設けておくことも重要です。
〈貸出ルールの一例〉
- 営業時間やゴミ出し、駐車場などの基本的なルール
- 転貸や他の業種との同居を禁止する
- 共有部と専有部の区分を明確にする
- 内装工事・原状回復のルールや工事できる範囲を決めておく
上記のようなルールを明確にしておくことで、テナント同士や内装工事などにおける思わぬトラブルを防止でき、スムーズな経営に役立ちます。
ビル経営について実績が多い不動産会社・建築会社に相談する
ビル経営を検討するなら、信頼できる不動産会社や建築会社をパートナーに選ぶことが重要になります。
ビルの建設や管理の実績が多い会社なら、専門知識やトラブル対応などの経験も豊富なため安心して任せられます。
土地をすでに所有している場合は、面積やエリアの需要を踏まえた上で、テナントビルや賃貸住宅の建設、買い替え、売却など、自身の目的に合った提案をしてくれる総合不動産会社に相談するのがおすすめです。
まとめ
ビル経営はアパート、マンション経営より初期費用は高めですが、その分高い収益性が見込める土地活用方法です。
集客力の高いエリアで需要に合ったテナントを誘致できれば、早期の投資回収も期待でき相続税対策としても有効です。
一方で、ビル経営は景気によって左右される面が大きく、安定して収益を上げるためには幅広い経営の知識や賃貸管理のスキルも欠かせません。
ビル経営を検討するなら、ビルの建設や管理のノウハウが豊富な、信頼できる不動産会社や建築会社をパートナーに選ぶことが重要です。
オカムラホーム「未来の財託」は、不動産総合会社として、ビルの建設、購入から賃貸管理までワンストップでサポートします。
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