分割できない土地を相続するポイント|共有・分筆のリスクやスムーズに売却・活用するための対策を解説
2025.04.10
2025.04.28
このコラムでは、均等に分割しづらい土地などの不動産を相続する際のポイントを解説します。
換価分割、代償分割など相続した土地を分割する4つの方法とそれぞれのメリット、デメリットや、分割せず共有名義にする方法、土地を分筆登記して分割する方法のリスクも紹介。
分割やその後の売却、活用などをスムーズに進めるために、相続発生前にできる準備や対策もまとめていますので、不動産を相続予定の方は参考にしてください。
コラムのポイント
- 土地や建物など不動産の相続は、公平に分割するのが難しいため、遺産分割協議で揉めたり、調停や訴訟に発展したりする可能性もあります。
- 土地の相続でトラブルを防ぐためには、相続発生前に土地を1人が引き継ぐのか、売却して分割するのかなど、早めに話し合って合意形成しておくのがベストです。
- 土地を含めた相続財産をどのように分割するのが良いかはケースバイケースのため、売却・運用など複数の選択肢に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
Contents
土地の相続はトラブルが起こりやすい
土地や建物などの相続では公平に分割することが難しいため、相続人同士の利害の対立が起こりやすく、遺産分割協議がまとまらない場合、調停や訴訟に発展する可能性もあります。
相続遺産が土地しかない、預貯金等があっても少額な場合や、誰も土地を相続したがらないなどの場合は特に、トラブルに発展しやすくなります。
トラブルを防ぐためには、相続人全員が納得できる分割方法を模索し合意形成をすることが重要になるのです。
相続した土地を分割する4つの方法
土地や建物など不動産を複数の相続人で相続する場合の分割方法は主に4種類あります。
それぞれの概要とメリット、デメリットを解説します。
代償分割
代償分割は、相続人の1人が不動産を相続し、不動産の評価額が法定相続分よりも多い場合に他の相続人に代償金を支払う方法です。
(例)相続人が2人の場合の代償分割
評価額5,000万円の土地を1人が相続し、もう1人に2,500万円の代償金を支払う
〈代償分割のメリット・デメリット〉
メリット…土地を売却せず公平に遺産を分割できる
デメリット…土地の相続人が代償金を用意しなければならない
代償分割は、代償金を支払うことで公平に遺産を分割できる点がメリットです。ただし、土地を相続する人に代償金の支払い能力がない場合は、実現は難しくなります。
換価分割
換価分割は、土地を売却し現金に換えて各相続人で分ける方法です。
〈換価分割のメリット・デメリット〉
メリット…代償金不要で公平に遺産を分割できる
デメリット…不動産を手放す必要がある
換価分割は代償金を支払う必要がなく、全員が公平に財産を得られる点がメリットです。
ただし、土地を売却することが前提になるため、元々相続人の1人が住んでいる場合など、実現が難しいケースもあります。
また、不動産を売却して得た売却益はそのまま分割できるわけではなく、仲介手数料などの諸費用や譲渡所得税等が差し引かれることにも注意が必要です。
現物分割
現物分割は、相続財産を不動産、現金、株式などそのままの形で相続する方法です。相続人のうち1人が不動産を現物で相続するケースが一般的です。
〈現物分割のメリット・デメリット〉
メリット…土地を売却せずに済む
デメリット…相続財産の種類や金額によっては公平な相続にならない場合がある
現物分割は、土地を手放さずに済む点が最大のメリットです。一方で、土地の価値が高く、他の財産が少ない場合は、公平な分割にならないため他の相続人が不満を持つ可能性もあります。
共有分割
共有分割は、土地を共有名義として相続人同士で所有する方法です。
〈共有分割のメリット・デメリット〉
メリット…相続人ごとの持分を決めて分割することで公平に相続できる
デメリット…管理が煩雑化しやすくなる、売却・活用しにくくなる、次世代の相続が複雑になる
共有分割は各相続人が土地の持分を公平に得られる一方で、管理や次世代以降の相続が複雑になったり、土地の活用方法で意見が食い違った場合に手続きが進められなくなったりするなどのデメリットがあります。
土地を売却することが決まっている場合は換価分割または代償分割、手放さない場合は代償分割または現物分割を選択するのが一般的です。
この他、有効な遺言書がある場合は記載されている分割方法が優先されます。
現物分割で土地を分筆して相続するメリット・デメリット
現物分割する際、土地を相続人全員で分筆登記して公平に分割するという方法もあります。
一般的に土地は細かく分かれていると評価額が下がる傾向があるため、分筆することで相続税や固定資産税などの負担が減る可能性もあります。
ただし、分筆には測量や登記費用がかかるほか、相続税は相続発生時の土地の状況で計算されるため、相続開始後に分筆しても相続税対策にはならない点に注意しましょう。
また、土地面積が小さくなり価値が低下することで売却時の利益が減ったり、活用しづらくなったりするリスクもあるため、分筆するメリット・デメリットを把握した上で選択する必要があります。
共有分割は後々のトラブルリスクが高い
共有分割は前述の通り、他の分割方法よりも将来的にトラブルになったり、管理や処分に手間や労力がかかったりしてしまうリスクが高いため、特別な事情がない限りはおすすめできません。
例えば、相続が発生しても土地を誰が引き継ぐのかを遺産分割協議で決めずにいると、「遺産共有」状態となり、土地は相続人全員の共有名義になります。
複数の相続人の共有名義になった不動産は、維持管理や納税も共有持分に応じて連帯して行う必要があります。足並みが揃わないと特定の人にかかる負担が大きくなったり、売却や活用しづらくなったりするリスクも大きくなります。
また、遺産共有状態で共有名義になった不動産は後から分割することが難しくなる点もデメリットです。
土地などの分割できない不動産を相続する際の注意点
土地や建物など、公平に分割しづらい不動産を相続する際に知っておきたい注意点をまとめます。
分割方法は相続発生前に合意形成しておくのがベスト
相続した土地の分割は、それぞれの方法のメリット・デメリットやリスクを理解した上で選択する必要があります。
また、相続人が多数いる場合や疎遠になっている場合などは、相続発生時の遺産分割協議による合意形成に時間も労力もかかり、スムーズに手続きが進められないこともあります。
土地の相続によるトラブルや突然の負担増を防ぐためには、相続発生前に相続人同士で方針をまとめておくことが非常に重要になります。
土地を1人が引き継ぐのか、売却して分割するのかなど、早めに話し合って決めておくのがベストです。
早めに査定を受けて売却に備えておく
売却前提で換価分割をするなら、不動産会社に早めに査定してもらった上で相続する金額を想定し、早期に売却できるよう準備を進めておきましょう。
固定資産税の評価額は不動産の時価の7割程度とされているため、売却時に売り出せる価格は固定資産税の納税通知書などからおおよそ推測することもできます。
ただし、実際に相続する土地に需要があるか、いくらで売れそうかなどは、専門家でなければ見極めは難しいため、土地売買や地域の不動産事情に詳しい不動産会社に相談するのがおすすめです。
売却や分割の障害となりそうな部分は専門家を活用する
土地の境界線が分からないなど、売却にあたってハードルがある場合は、早めに土地家屋調査士などの専門家に相談する必要があります。
また、不動産を含む遺産の相続手続きは複雑で専門的な知識が必要なため、自分で行うには時間も労力もかかります。
相続人が多い場合やトラブルが予想される場合は、弁護士や税理士などの専門家に相談しておくのもおすすめです。
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まとめ
土地や建物など不動産の相続は、公平に分割するのが難しいため、遺産分割協議で揉めたり、調停や訴訟に発展したりする可能性もあります。
土地の相続でトラブルを防ぐためには、相続発生前に土地を1人が引き継ぐのか、売却して分割するのかなど、早めに話し合って合意形成しておくのがベストです。
土地を含めた相続財産をどのように分割するのが良いかはケースバイケースのため、売却・運用など複数の選択肢に詳しい専門家に相談するのがおすすめです。
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